Hopfield Network の構造を与え、収束することまで証明しました。今回は Hopfield Network の応用として、連想記憶を解説します。Hopfield Network を使った連想記憶を Hopfield Associative Memory と呼び、以下では HAM と略します。
HAM
Hopfield Network はどんな初期状態からでも収束して、安定状態ではエネルギーが極小となります。ここまでの議論では安定状態が存在することしか分かりません。HAM では指定した状態が安定状態になるようにネットワークを構築します。例を考えてみましょう。ニューロン数を25として、次の25次元ベクトル
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HAMではいくつかの状態を安定させるようにネットワークを構築します。この操作を学習と呼び、安定させる状態を学習パターンと呼びます。
ヘブ則
ヘブ則は原始的で簡明な学習法です。ニューロン数を
結合荷重を行列を使って表現してみましょう。
行列による計算でも
今回の学習パターンは1つでした。次回、複数の学習パターンを扱います。
興味の対象
物理学者と工学者がこの分野を研究していますが、各々で興味の対象が異なります。工学者は連想記憶を応用することに関心があります。HAM 自体が Hopfield Network の応用の1つですが、さらに HAM に工学的応用を与えたいところです。しかし、HAM の工学的応用例は乏しいです。HAM の論文を投稿すると、HAM の応用を提示しないと納得しない査読者もいます。そういう査読者には HAM 自体がすでに応用であるという主張は通りません。これまでに HAM に関する論文が多数出版されている状況で、1査読者の価値観で否定されてしまうのはどうかと個人的には思います。そういう査読者に当たってしまったら、あきらめて別の投稿先にチャレンジするのが良いでしょう。
物理学者は統計力学のモデルとして HAM に関心があります。例えば、HAM の記憶容量は重要な問題ですが、物理学者は記憶容量を求めること自体に興味があります。私のような工学基礎の研究者は多くのパターンを記憶させたいと考えますので、記憶容量を大きくすることに関心があります。工学でも応用志向の研究者はアプリケーションに組み込みたいのでしょうが応用事例はあまりありません。